テレビ朝日系の人気ドラマ「緊急取調室(通称キントリ)」が、ついに劇場版で完結を迎えました。
天海祐希さん演じる真壁有希子を中心に、取調室という限られた空間で人の本音をじわじわとあぶり出してきたこの作品。
シーズンを重ねるごとにファンが増えていった、根強い人気ドラマです。
そんなキントリの集大成となるのが、劇場版「緊急取調室 THE FINAL」。
一度は公開直前まで進みながら、やむを得ない事情で公開延期となったことでも、大きな話題になりました。
私自身、全シーズンを追いかけてきた一人なので、延期の知らせを聞いたときは、正直かなりショックでした。
それでも「どんな形でも、最後はきちんと見届けたい」と思い、公開後に劇場へ足を運びました。
この記事では、ネタバレをできるだけ避けながら、延期を経て完成した劇場版キントリを実際に観た、率直な感想をお伝えしていきますね。
劇場版キントリが背負った「延期」という重すぎる現実

写真はイメージです。
劇場版「緊急取調室 THE FINAL」は、もともと公開直前まで制作が進み、試写会も行われていました。
ところが、総理大臣役として出演していた俳優さんが、現実世界で重大な事件により逮捕されるという、あまりにも衝撃的な出来事が起こります。
その影響で、作品は公開延期という、苦渋の決断を迫られました。
総理大臣という役柄の性質上、代役や編集で簡単に対応できるものではありません。
しかも、キントリのメンバーは皆さん多忙な売れっ子俳優ばかり。
再撮影やスケジュール調整の大変さは、想像するだけでも気が遠くなりますよね。
「このまま幻の作品になってしまうのでは…」
そう感じたファンも、きっと少なくなかったと思います。
(私もそう思い一度はがっかりしました orz )
だからこそ、こうして最終的に劇場公開までたどり着いたこと自体が、ひとつの奇跡のようにも感じました。
長年続いたシリーズの最後を、きちんと世に届ける。
その覚悟と努力が、この映画にはしっかり込められていたように思います。
延期という出来事は、作品にとっては不運でしかありませんでした。
それでも「最後までやり切る」という選択をしてくれたことに、ファンとしては感謝の気持ちの方が大きかったです。
劇場版「緊急取調室 THE FINAL」あらすじ(ネタバレなし)

超大型台風が連続して発生し、日本全体がピリピリと緊張した空気に包まれる中、内閣総理大臣・長内洋次郎(石丸幹二)は、重要な災害対策会議に10分遅れて姿を現します。
その、たった10分。
このわずかな時間差が、やがて「空白の10分間」として、大きな意味を持つことになります。
同じ頃、総理大臣を標的とした襲撃事件が発生。
犯人は森下弘道(佐々木蔵之介)と名乗る男で、取り調べでも犯行の動機を一切語ろうとせず、「総理大臣を取調室に連れて来い」と要求を繰り返します。
あまりにも異例の事態を受け、警視庁は特殊取調班「キントリ」を緊急招集。
真壁有希子(天海祐希)率いるキントリチームは、森下の本当の狙いを探るため、慎重に取調べを進めていきます。
ところが捜査が進むにつれ、この事件は、単なるテロでは終わらない様相を見せ始めます。
森下の言動、そして総理にまつわる過去が、少しずつ一本の線でつながり始め、長内総理自身にも“ある疑惑”が浮かび上がってくるのです。
「総理を取調べたいんです。」
真壁は、前例のない決断を口にし、真実を明らかにするために動き出します。
国家の非常事態と、ひとつの取調室。
張りつめた心理戦の中で、キントリは立場や権力を超えながら、「正義とは何か」「真実を暴く意味とは何か」という重い問いと向き合っていきます。
これは、キントリ史上もっとも困難で、もっとも重い“最後の取調べ”の物語です。
【ネタバレあり】劇場版キントリの核心部分

※以下は物語の核心に触れています
※マウスでドラッグ(反転)すると読めます
物語の終盤、国家の非常事態という前代未聞の状況の中、異例中の異例とも言える形で、長内総理自身がキントリの取調べを受けることになります。
タンカー撃沈作戦が進行する緊迫した時間帯に、長内総理はキントリに対し、録音・録画を止めるよう要求します。
そしてついに、25年前に起きたヨット事故の真相を、自らの口で語り始めます。
大学時代、長内と森下たちは「ヤーレン号」でヨットレースに出場しており、長内は艇長を務めていました。しかしレース当日、天候の悪化を理由に出港に異を唱えていた仲間・上地と長内は激しく口論になります。その最中、長内は感情を抑えきれず「死ね」と口にし、上地を海に突き落としてしまったのでした。
上地はそのまま帰らぬ人となり、遺体も航海日誌も見つからないまま事故として処理されます。長内は「仲間を救ったリーダー」として世間から称賛され、その評価を足がかりに政界へ進出し、やがて総理大臣の座にまで上り詰めていきます。
一方、森下は事故の真相と向き合えないまま生き続けてきました。上地を見殺しにし、嘘の証言をしたことへの後悔は消えず、孤独な人生を送っていたことが語られます。癌に侵され死期を悟った森下は、「空白の10分間」に長内へ電話をかけ、上地の航海日誌や遭難場所について話題にします。
長内はそれを脅しだと受け取り、航海日誌を買い取ると返答しますが、森下の本心は違っていました。彼が望んでいたのは、金でも地位でもなく、二人で過去と向き合い、上地の死を悼むことでした。しかし長内は、その思いからも目を背けてしまいます。
さらに、長内がヨットの艇長になった経緯さえも、父の財力による不正なものだったことが明らかになります。それでも長内は、自らの判断は間違っていなかったと主張し、総理を辞めるつもりはないと断言します。「清廉潔白では国のリーダーは務まらない」「国民は強い指導者を求めている」と語り、真実を知ったキントリに“見逃す”という選択を迫るのでした。
キントリが突きつけたのは、立場や功績ではなく、逃げ続けてきた罪そのものでした。正義と真実に向き合った者が苦しみ、逃げた者が成功する──そんな歪な現実を浮かび上がらせながら、物語は重い問いを残して幕を閉じます。
キントリらしさは健在。メンバーの絆に泣ける

劇場版になっても、「緊急取調室」らしさはまったく失われていませんでした。
真壁有希子のぶれない強さ、仲間を信じる姿勢、そして取調官たちの絶妙な距離感と信頼関係。
これまでシリーズを見続けてきた人ほど、「ああ、これこれ」と安心できる空気が流れています。
キントリといえば、“言葉”と“間”で人の心を追い詰めていくスタイルが印象的ですよね。
俳優さんたちの熱演が光るドラマでした(安達祐実さんや桃井かおりさんの回、印象に残っている方も多いのでは)。
今回は劇場版ということもあり、取り調べのパートはやや少なめな印象でしたが、その分、メンバーそれぞれが自分の立場で役割を果たし、自然に支え合っている姿には、何度も胸が熱くなりました。
また、キントリに出演されていた、故・大杉漣さんの役柄についても、新規出演はありませんが、写真という形でしっかり存在が残されていました。
「キントリなら、きっと大杉漣さんの存在も大切にしてくれる」
そう思っていたので、エンドロールでお名前を目にした瞬間、言葉にできない感情が込み上げてきました。正直、泣きました😭
(なんなら書きながら今も目にじわっと涙が😢)
シリーズを通して積み重ねてきた時間の重みを、静かに感じさせてくれる演出だったと思います。
「終わってしまう寂しさ」と、「ここまで見届けられた安心感」。
その両方を抱かせてくれるのが、今作の大きな魅力です。
正直に言うと…物語に入りきれなかった部分もあった

写真はイメージです。
全体として満足度の高い作品ではありましたが、正直に言うと、物語の軸となる「空白の10分間」に、少し意識が集中しすぎているようにも感じました。
ミステリーとして重要な要素なのは分かるのですが、そこを追いかけるあまり、感情が置いていかれてしまう瞬間があったのも事実です。
また、作中では大型台風が複数接近し、国全体が緊迫する状況が描かれています。
その一方で、総理大臣の過去の罪や真相を同時進行で暴いていく展開に、「なぜ今なんだろう?」という違和感を覚えてしまいました。
決してテーマが軽いわけではありませんが、非常事態とのバランスが少し噛み合わず、緊急性を感じにくかった部分は否めません。
そのため、物語に完全に没入できたかというと、どこか冷静な自分が残ってしまった感覚もありました。
ただ、これは好みや受け取り方にも左右されるところで、キントリらしい会話劇や人間描写が好きな方には、十分に刺さる内容だと思います。
(実際、一緒に観に行った家族は「最高に良かった。また観たい」と言っていました)
なお、総理大臣役を演じた石丸幹二さんは、本当に説得力のある存在感でした。
落ち着きと知性を併せ持った佇まいが役柄に自然に馴染んでいて、「この役は石丸さんで良かったな」と素直に感じました。
石丸幹二さん演じる総理に感じた、どうしても拭えない違和感
石丸幹二さん演じる長内総理は、あまりにも「清廉潔白」という言葉が似合いすぎる人物でした。
それは石丸幹二さんご本人のイメージとも重なり、映画の中でも、分かりやすく私利私欲に走る悪人としては描かれていません。
むしろ非常事態の中でも、世間体や支持率に振り回されることなく、国民を守るために強いリーダーシップを発揮する総理でした。
正直、「今の日本に、こんな総理がいたらいいのに」と思ってしまうほど、頼もしさすら感じます。
だからこそ、25年前の罪を“今このタイミングで”糾弾することに、私はどうしても引っかかりが残りました。
もちろん、長内総理の犯したことはどんな理由があっても許されない重大な行為であることに、異論はありません。
ただ、国家が揺らぐほどの緊急事態と並行して描かれるべきだったのか、と考えると、私の中では正直首をかしげてしまう部分もありました。
森下からの電話を脅しと受け取り、金で解決しようとする姿や、「自分の判断に間違いはなかった」と強弁する場面に、人としての弱さや醜さは確かに描かれています。
それでもなお、総理としての姿があまりにも“今が良い人すぎる”ため、見終わったあとの納得感には、少しつながりにくかった印象です。
もし、表の顔と裏の顔がもっと噛み合わない人物だったなら、「ついに化けの皮が剥がれた」と感じられたかもしれません。
そういう意味では、「なぜ今?」「この糾弾は本当に必要だったの?」と考えてしまう余地が、かなり残る気がしました。
そのモヤっと感も含めて、分かりやすい勧善懲悪では終わらない、いかにもキントリらしい結末だったとは思います。
ただ、最後まで観終えても、気持ちがすっきり整理されないまま、静かにエンドロールを迎えた――
それが、私の正直な感想でした。
とは言え全体的に見ると、やはり見応えのある作品だったという気持ちの方が強く残っています。
登場人物たちが積み重ねてきた時間や関係性は、劇場版だからこそより濃く感じられましたし、一本の映画としての完成度も高かったと思います。
派手さよりも、人と人との対話や感情の揺れを大切にしてきたキントリらしさは最後まで失われておらず、「ああ、やっぱりこの作品が好きだな」と感じさせてくれる瞬間が何度もありました。
すべてに納得できたわけではないし、モヤっとする部分も確かに残ります。
それでも、長年見続けてきたシリーズの最終章として、これ以上ないほど真剣に、誠実に作られた一本だったことは間違いありません。
完璧な答えを提示するのではなく、観た人それぞれに考える余白を残して終わる――
その余韻も含めて、「緊急取調室」という作品らしいラストだったのだと思います。
まとめ
劇場版「緊急取調室 THE FINAL」は、正直観る人によって感じ方が分かれるところもある作品かもしれません。
(とは言えレビューサイトでの評価は高いようです)
それでも、延期という大きな困難を乗り越え、シリーズの最後をきちんと描き切ったことには、大きな意味があると感じまています。
長年キントリを見続けてきた方にとっては、登場人物たちの関係性や積み重ねそのものが、何よりの見どころと言えるでしょう。
一方で、初めて観る方でも、人間ドラマとして楽しめる、丁寧な作りになっています。
「キントリが好きだった」「最後を見届けたい」そう少しでも思っているなら、ぜひ劇場で体験してほしい作品です。
スクリーン越しに感じる取調室の緊張感と、観終わったあとの静かな余韻は、きっと心に残るはず。
「劇場版で完全終了!」というのも格好いいけれど、ファンとしては、数年に一度でいいから、スペシャルドラマでまたキントリメンバーに会えたら嬉しいな…と思ってしまいます😄
大倉さん演じる副総監の「いやいやいやいやいや~」にも笑えました。大倉さん好き!

